皆さんこんにちは。「背すじ伸ばしなさい!」「ほら、また丸まってる!」——お子さんに毎日のように声をかけているご家庭、本当に多いと思います。けれど、ここでひとつだけ知っておいていただきたいことがあります。そもそも "良い姿勢" というのは、じっと固めるものではないのです。
良い姿勢は、常に微かに揺れている
姿勢のお話をするとき、私はよく「一本の棒を手のひらに立てる」例をお話しします。棒を倒さないでいるためには、手を細かく動かして揺らぎながらバランスを取りますよね。何もしないでじっとしていたら、棒はすぐに倒れてしまいます。
人の体も、まったく同じです。私たちは 常に微かに揺れることで、姿勢を保っているのです。立っていても、座っていても、です。腰や背骨は地球の重力に対して "倒れないように" 細かく動き続けています。揺らぎがあるから、姿勢は崩れない。
ということは、「背すじを伸ばして固めなさい」と言うのは、ある意味、体の自然な働きを止めなさいと言っているのと同じになりかねません。子どもが5秒で姿勢を戻してしまうのは、わがままでも反抗でもなく、体が本能的に「揺らぎを取り戻そう」としているからかもしれない——そんなふうに見ると、毎日の "叱る" もちょっと違って感じられないでしょうか。
では、子どもの猫背の "本当の" 原因はどこにあるのか
体育座り、椅子の上での足組み、ソファに寝そべってのタブレット、長時間の前のめりの勉強、スマホ……。これらが繰り返されると、成長期の子どもの背骨と内臓のバランスは確実にゆがんでいきます。実際、近年は子どもの側弯症(背骨が左右に曲がる状態)も増えてきています。日本ではほとんど見られなかったものが、生活様式が欧米化するにつれて多く見られるようになってきたのです。
そして、もうひとつ大事な視点を。子どもの体は、もともと "あらゆる方向に動く" ことで発達するように出来ています。
昔の子どもは、学校から帰るとランドセルを放り投げて、暗くなるまで近所の子と遊んでいました。鬼ごっこ・木登り・ケンケン・しゃがむ・走る・跳ぶ・転ぶ。あらゆる方向の動きを毎日やっていたのです。これが、姿勢を支える土台になっていました。
ところが現代では、その "あらゆる方向の動き" が 特定のスポーツや ゲームに置き換わっています。サッカーならサッカーの、野球なら野球の、効率的で偏った動きを毎日繰り返す。これは、姿勢を支える筋肉のバランスから見ると、実はあまり良くありません。偏った体は、不健康な体です。
家でできる、4つのこと
- "歩く時間" を、家族で取り戻す 私たちは陸上を歩くようにできた動物です。子どもの体を本当に整えたいなら、まず家族で歩く時間を作ってください。週末に30分〜40分ぐらいのお散歩でも構いません。歩くことは姿勢を支える筋肉を全方向から鍛えてくれる、唯一の "偏らない運動" です。
- 遊びを、特定の競技に置き換えすぎない スポーツが悪いわけではありません。素養としていろいろやるのはとても良いです。ただ、小学生のうちから一つの種目だけを毎日させるのは、体の偏りを作ります。"色々な動き" を含む遊びの時間を、毎週どこかに残してあげてください。
- 視線と座面を、体に合わせる 子どもは1年でぐんと成長します。3年前の学習椅子と机がまだ合っていますか? 「足裏全体が床につく」「膝とお尻が同じ高さ」「肘を曲げて手が机に乗る高さ」が目安です。タブレットや教科書はスタンドや書見台で視線を水平に近づける——これだけで、子ども本人の頑張りを必要とせずに姿勢が変わります。
- "土台" と "末端" を、道具で誘導する 座る土台=骨盤、前の柱=手。この2点を立ててあげると、その間にある背骨は自然と立ち上がります。『おしりのSiseii』を椅子に置けば骨盤が前傾位に誘導され、『手のSiseii』を机に置けば、手のひらに "バーチャルな地面" ができて、その力が腕を伝って体幹に届き、背筋がスーッと起き上がります。本人は何も意識しなくていい——これが、子どもの姿勢ケアでいちばん大事な視点だと、私は考えています。
「姿勢に気をつけて」より「環境」のほうが、ずっと早い
整骨院に「子どもの姿勢が気になって」と相談に来られる親御さんは、本当に多いです。お話を伺ってみると、ほぼ共通して仰るのが「毎日言ってるんですけどね……」。みなさん、本当によく言っていらっしゃるのです。だから疲れて、それでも変わらなくて、自分を責めてしまう。
「姿勢に気をつけて」を、家族のなかから減らしてみる。
代わりに、椅子と机と道具を整える。
それだけで、家の空気まで変わります。
姿勢のことで叱る回数が減ると、子どもは責められない安心感の中で、自分の体に注意を向けられるようになります。これは、何百組もの親子を整骨院で見てきて、断言できることのひとつです。
「うちの子の机を見てもらえませんか?」というご相談、よくいただきます。LINE で椅子と机の写真を1〜2枚お送りいただければ、お子さまの体格や用途に合うかを私から具体的にお返事します。買う・買わないに関わらず、まずはお気軽にどうぞ。
最後に:子どもの体は、まだ十分に変えていける
整骨院で長く子どもたちを見てきて、つくづく感じるのは、子どもの体の回復力は本当にすごいということです。「もう年だから無理」と諦めの気持ちが強くなりがちな大人と違って、子どもは環境を変えてあげれば、ぐんぐん変わっていきます。
「うちの子はもう猫背だから」と、思い込まないでください。家の環境と、親御さんの関わり方が少し変わるだけで、子どもの体は まだ何度でも、整えなおせるのですから。



